自己免疫性GFAPアストロサイトパチー
自己免疫性GFAPアストロサイトパチーまとめ
2016年,メイヨークリニックの医師らにより,『自己免疫性GFAPアストロサイトパチー』という疾患概念が提唱された。
以後,各国から同様の病態を呈する報告が相次いだ.
2019年4月,岐阜大学の木村先生らが,日本人における自己免疫性GFAPアストロサイトパチーの疾患頻度は少なくないことを報告した.
病態機序
本疾患の病態機序は明らかではない.
GFAP特異的CD8陽性T細胞が重要な役割を担っているとされている.
ミクログリア,マクロファージ,サイトカイン,ケモカインの関与の可能性あり.
未知の細胞表面抗原に対する自己抗体を合併している可能性あり.
抗GFAP抗体とは
GFAPのアイソフォームの1つであるGFAPαを認識する抗体である.GFAPはアストロサイトの細胞内抗原であり,抗GFAP抗体が本病態の原因とは考えにくいとされている.
透過性処理をした培養細胞を用いたcell based asseyで検出される抗体であり,偽陽性を避けるため,患者髄液を用いた免疫組織染色により,アストロサイトの染色性の確認も必要である.
典型的症状
その他の症状
- 不随意運動(振戦,ミオクローヌス)
- 自律神経障害(膀胱直腸障害,勃起障害など)
- 低Na血症(SIADHによる)
- 腱反射亢進
- 精神症状
- 脳幹障害(呼吸障害,眼球運動障害)
- 認知機能障害
- 失調
- 痙攣
- 筋力低下
- 感覚障害
- 霧視(視神経乳頭浮腫による)
臨床診断
原因不明の髄膜脳炎,髄膜脳脊髄炎や急性散在性脳脊髄炎と臨床診断されることが多い.
髄液中の抗体を調べて初めて,自己免疫性GFAPアストロサイトパチーの診断がつくことが多い.
髄液所見
画像所見
頭部CT
- 特になし
頭部MRI
- 脳内に多発するT2高信号変化
- 視床後部
頭部MRI Gd造影
- 約半数で側脳室周囲に放射状に広がる血管周囲の線状造影効果を認める.
頸ー骨盤部MRI
- 3椎体以上に渡る長大な脊髄病変をきたすことがある.(抗AQP4抗体陽性視神経脊髄炎との鑑別が問題)
- 脊髄病変は,境界が不明瞭で,腫脹を伴わない.中心管に沿った細長い線状の造影効果を認めることもある.
合併症
腫瘍を合併を一部で認め,傍腫瘍性症候群として発症する.最も多い合併腫瘍は卵巣奇形腫.
その場合は抗NMDA受容体抗体を合併することがある.
治療
副腎皮質ステロイドに対する反応性は良好.
予後
ステロイド減量中に再発することがある.
予後は一般的に良好であるが,時に重篤な後遺症を残した症例や,死亡例も報告されている.
これらの症例は,診断までに時間を要した症例,十分な免疫療法を行わなかった症例,腫瘍合併例での腫瘍の進展が見られた症例.